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No.28 ゴールウェイさんとの再会

2年ぶりの来日を果たした、サー・ジェイムズ・ゴールウェイこと、ジミーの演奏会が
各地で開かれたのは6月初旬のことでした。
名古屋では名古屋国際音楽祭に出演。
前半はピアニストのフィリップ・モルさんとの共演によるリサイタル。
そして後半は名古屋フィルとの共演で、ハープの吉野直子さんや
奥様でフルーティストのジニー・ゴールウェイさんとコンチェルトを演奏するといった、
超人的なプログラムを終え、サントリーホールでのリサイタルのため上京なさいました。
6月10日の「時の記念日」に合わせたコンサートは、満員のお客様で賑わっていました。

プーランクのソナタを聴いた私は、懐かしさでいっぱいになりました。
学生時代、どれほどジミーのレコードでこの曲を聴いたことでしょう
(当時はLPだったのですよ)。
その頃の私にとって、プーランクはものすごく大人の音楽で、
強い憧れを持って聴いたものです。
そしてジミーの音の輝かしさ、豊かさ、コントロールの巧みさ、音楽の作り方、歌い方…。
どれをとっても言葉にならないほど素晴らしく、
「どうしたらこんな風に吹けるのだろう」「何か秘密があるのかしら」などと思いながら、何回も何回もレコードに針を落としたのです。
それから何年か経ち、ジミーに親しく教えていただくようになってからも、その疑問は完全に消えることはありませんでした。

今回、開演前に訪ねた楽屋で、彼はこう言っていました。
「なにも秘密なんてないんだ。これだけさ。」
と、左手の人差し指の付け根と、右の親指を見せるのです。
つまり、フルートを支えるポジションにできた、山のように固く盛り上がったタコが全ての答えだと。
あまりにも豊かな音と鮮やかなテクニックを持っているが故に、
天才的に思われてしまいがちなジミーは、本当に努力家なのです。
そして、
「一つひとつの音を、確実に狙いをつけて作っていくこと。
そして本当に心からの表現をすることなんだよ」
当たり前のことばかりかもしれません。
でもこの中にどれほどの深い意味が含まれているかを、私は改めて噛み締めました。

演奏会のあいだ中、私は彼の言葉が頭から離れませんでした。
そしてどれほど強い気持ちで、彼がそれらのことを貫いてきたのか、ということに思いをはせました。
「時の記念日」にちなんで、60秒ちょうどでリムスキー・コルサコフの「くまんばち」を見事吹き終えたジミーに、満場の拍手は鳴り止みませんでした。
「こんなの、なんでもないよ!」
とでも言いたげな無邪気な表情が、彼の魅力の全てを語っているようでした。
2005年6月29日
山形由美
 
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