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No.07 夏の思い出

8月最後の週末、私は横浜関内ホールに足を運びました。
開場を待つホールの前には長蛇の列。
大人達に混ざって、たくさんの子供達の姿が目に付き、私がよく行くクラシックの演奏会場とは全く違う雰囲気に驚かされます。
それもそのはず。 演目は 2003年サマースペシャルミュージカル「美少女戦士セーラームーン」 〜スターライツ・流星伝説〜 なのですから。

何故私が、セーラームーンに?と驚かれる方も多いでしょう。
姪が遊びに来ると、必ずセーラームーンの漫画を読まされていましたし、マネをするのを目にしたりして、子供達に人気があるということは知っていましたが、まさか自分がミュージカルを見に出掛けるなどということは予想していなかったことです。
それなのにどうしてかといいますと、実はこのミュージカルの作・編曲・音楽監督を担当していらっしゃる方を存じ上げているからなのです。

中学生の時、とてもステキな歌がはやりました。
女の子なら誰でも夢見るような未来を、澄んだ歌声が紡ぎ出していて、一度聴いただけで心に染み込んだことをよく覚えています。
そしてその曲が、ピアノを弾きながら歌う、その人の自作だと聴いたときの驚き。
すぐさま私は、放課後レコード店に向かうとレコードを買いました。
その曲とは、小坂明子さんの「あなた」。
そしてそれは、私が生まれて初めて自分で買った、記念すべきレコードとなりました。

それから長い年月が経ち、小坂明子さんに初めてお目にかかったのは昨年のことでした。
ある出版記念パーティで、その著者の方から紹介していただいたのです。
「初めて自分のお小遣いで買ったレコードは、小坂さんのレコードだったんですよ」
と思わず思い出話をお伝えすると、
「実は、私は山形さんに曲を書いたことがあるんです。ドトールコーヒーのコマーシャルに出ていた山形さんが吹いていた曲は、私の作品でした」と小坂さん。
「あの曲が小坂さんの作品だったのですか?」
と答えた私は、優しいリズムに暖かなメロディが乗ったその曲を思い出しました。
その当時、私には作曲者の名前は伝えられていませんでしたし、コマーシャルの撮影以外で演奏する機会がなかったものの、曲そのものが心の中に深く残っていたことを感じました。
その時がきっかけで、小坂さんと私は、音楽の話はもちろんのこと、健康管理や生き方のお話しなどさせていただくようになりました。
そして、小坂さんが「あなた」以降は作曲を中心として、多岐に渡る膨大な量のお仕事をこなし、大活躍されていることを改めて知り、ファンとして心からうれしく思いました。

その中のひとつとして取り組んでいらっしゃるのが「セーラームーン」なのです。毎年変わるストーリーのため、音楽を全て書き直すという作業がどんなに大変なことかということは、ミュージカルを拝見していてひしひしと伝わってきました。
生き生きと躍動するシーン、しっとりとしたシーン・・・。次々と展開される物語に音楽が調和しながら起伏を作り出し、約3時間にわたる舞台は ついに幕を閉じました。
見終わった高揚と共に会場を去る子供達に混じって、過ぎゆく夏を惜しみながら私も家路につきました。
2003年8月31日
山形由美
 
※小坂明子さん作曲、山形由美演奏の曲は、現在でもドトールコーヒー店内で流れていることがあります。
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