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No.03 まだ覚めやらぬ、あの夜の興奮

朝起きてカーテンを開けると、鮮やかな新緑が目に染みます。
5月、1年で最もよい季節かもしれませんね。
浜離宮朝日ホールでのリサイタルが終わってから、1週間が経ちました。
それなのに、未だに耳の奥で鳴っているのは、歯切れの良いラテンのリズム。
それほど今回のリサイタルは、私の心と体に強く残るものとなったようです。

リサイタルのメイン曲、マウアー作曲「ソナタ・ラティーノ」を初めて聴いたのは、数年前に参加したアメリカ・オーランドで開かれたフルートコンベンションでのことでした。この曲を初演した女性フルーティストによる演奏はとても鮮やかで、強く印象に残ったことを覚えています。そのとき、いつか私も演奏したいと楽譜を求めてきたのですが、ついに今回初めて演奏することにしたのです。もともとはフルートとピアノのために書かれているのですが、私は更にラテンのテイストを際だたせるために、パーカッションを加えることにしました。
その結果、ピアノ・アレンジの丸山和範さんと、パーカッションの継田和広さんの絶妙なコンビネーションで、素晴らしいリズムセクションが誕生しました。
本番では、一楽章はサルサ、二楽章はタンゴ、三楽章はサンバと、キューバ・アルゼンチン・ブラジルのリズムが変化していくごとに気持がどんどん高揚してきて、吹き終わったときにはまるでスポーツで汗を流した後のような、爽快感と達成感がありました。

常日頃、テーマ性を持たせたプログラミングづくりを心がけている私ですが、今回は「歌とリズムを訪ねて」と題して、第一部と第二部を全く違う趣にしてみました。
歌心を大切に演奏した前半から、後半はリズム主体の曲作りをする中で、180度異なる演奏スタイルを展開させていくには、様々なコントロールが必要でしたが、とても吹きごたえのあるものでした。そして演奏中も数々の発見があったのはうれしいことです。
これからはぜひ東京以外の場所でも展開して、より多くの皆さんに楽しんでいただければ、と思っています。

プログラム
<歌を訪ねて>
ショパン「シンデレラ」の主題による変奏曲 ホ長調
メルカダンテ「ドン・ジョヴァンニ」の主題による変奏曲(Flソロ)
ジュナンヴェニスの謝肉祭 作品14
ヴィラ=ロボスブラジル風バッハ 第5番より アリア
ドップラーヴァラキアの歌 作品10
<リズムを訪ねて>
マウアーソナタ・ラティーノ
丸山和範 編ダンシングス・イン・ザ・ワールド
「タンゴの歴史」より〜ボルデル1900(A. ピアソラ)
「カルメン」より〜ハバネラ(G. ビゼー)
「ちゅらさん」より〜Love Thema(丸山和範)
「ウエスト・サイド・ストーリー」より〜Mambo(L. バーンスタイン)
「タンゴの歴史」より〜ナイトクラブ1960(A. ピアソラ)
「ガイーヌ」より〜剣の舞(A.I. ハチャトゥリアン)
2003年5月1日
山形由美
 
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