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No.59 Yumi meets Venetians 〜ヴェネツィアの仲間たち〜

とうとうツアーが終わりました!
ヴェネツィアの音楽仲間、チェンバロ奏者でありピアニストでもあるパオロ・コニョラートさんとチェロのダビデ・アマーディオさんとの、刺激的な1週間が過ぎてしまいました。彼らとの出会いは3年前に遡りますが、ヴェネツィア室内合奏団との共演や日伊でのツアー、そして「Luce」のレコーディングなどでその素晴らしい音楽性にはいつも魅了され続けていました。そして今回念願のトリオコンサートが実現できて、更に幸せな思いです。 1週間で6公演を行ないましたが、疲れるどころか、今の私は心身ともに熱気で満たされています。それはおそらく、彼らと共に心の底から音楽を表現したそのエネルギーがまだ沸々と燃えているからに違いありません。

千葉・君津では美しい日本画が施されたチェンバロを用いた、全編バロックのプログラムでした。温かな響きの会場に3人の奏でた音が重なり合い、ツアー初日を迎えたときの喜びは大きなものでした。 次の日は、横浜共立学園の約1000人の生徒さんたちに聴いていただきましたが、さすが歴史あるミッションスクールの生徒さんたちだけあって、とても静かに聴いてくださいました。終演後、たくさんの生徒さんたちや先生方が見送ってくださり、私たちも名残惜しく会場をあとにしました。横浜山手の街並みは、ヴェネツィアからのおふたりにも、とても美しく映ったようでした。
そして東北新幹線で一路北へ。彼らにはもう何回目かの盛岡だそうで、さっさと自分たちでお店を見つけて、お寿司やお刺身を堪能してきたそうです。雪をいただいた山々が印象的と、ホールに向かう道すがら目を遠くにやっていました。
この会場ではまったく別プログラム。パオロさんはピアノを演奏します。
ハイドンのトリオは特にピアノパートが大活躍しますが、パオロさんの美しいタッチによって明快に奏されました。珍しいのはフルートとチェロによる、ヴィラ=ロボスの「ジェット・ホイッスル」。リズムが変化し、珍しい音使いがふたつの楽器を用いて交差します。そして終楽章最後にフルートの歌口を全部ふさいで息を吹き込む部分がこの曲のタイトルの所以です。またダビデさんお得意のイタリア・ヴィルトゥオーゾの曲、パガニーニ「ブラヴーラ変奏曲」では、お客様をうならせる超絶技巧が披露されました。

ツアー前半が終わったところで移動日がありました。翌日の演奏会に備えて那須塩原駅に下り立った一行は、那須高原へ。彼らは私のよく知っている居心地の良い和風旅館に入りました。そして昨年ヴェネツィア公演のあとパオロさんのご自宅に招待していただいて以来、すっかり打ち解けている私の両親も交え、ゆっくりと懐石料理を楽しみました。イタリアの話、日本語についての質問などが飛び交い、夜の更けるまで語り合いました。
翌日、1年ぶりに訪れた那須野が原ハーモニーホールは、彼らにも懐かしい場所だったことでしょう。昨年はテレビ番組の「ソロモン流」でもコンサートの模様が放映されたこともあり、彼らもすっかりおなじみの顔として、歓迎を受けていました。アンコールにクリスマスの賛美歌を演奏し、もうひとつサプライズのプレゼントがあることを発表しました。それは、ホールの周りに灯された1500本もののキャンドル。那須高原の「キャンドルハウス シュシュ」さんからの、来場してくださった方、そして私たち演奏者への心尽くしの一足早いクリスマスギフトでした。終演後、ドレスやタキシードのままで急いでホールの外に出た私たちが目にしたのは、白やブルー、そして色とりどりの灯火たちでした。水場に浮かぶキャンドルや、階段の脇に連なるキャンドルが、それはそれは美しく瞬いていました。何時間もかかって設置してくださったのはシュシュさんのスタッフのほか、地元のボランティアの方々、また通りすがりの子供たちだったのだそうです。ホールの壁面につけられたイルミネーションと共に、キャンドルの光が帰路に着く聴衆の皆さんの心を照らしてくれたことに、心から感謝したいと思います。

そして次の日に迎えたのは東京公演。浜離宮朝日ホールには懐かしい友人たちやいつも応援してくださっている方々なども多く訪れてくださっていました。前半はヴェネツィア・バロック。ヴィヴァルディやマルチェッロなどは、まさに彼らの中に息づいている音楽です。その即興的な動きのおもしろさといったらありません。リハーサルや本番で、幾度演奏しても同じことはないのです。装飾音、リズムの取り方、アーティキュレーションの変化など、彼らから発せられる動きにこちらも敏感に反応しているうちに、私からも自然に即興が生まれ出てきました。音が音に誘いかけ、会話し、終わったかと思うと蘇る…。まさにバロック音楽の楽しみとはこういうものなんだと、心と体で感じた瞬間でした。後半はフランス・バロック。ヴェルサイユ宮殿に流れた宮廷音楽を奏でます。打って変わって各自の音色が典雅に柔らかくなります。特にダビデの奏でるマラン・マレの作品を聴いていると、チェロがまるでヴィオール(マレの得意としたチェロとよく似た形の古楽器)かと見まごうほど。彼の表現の幅の広さには驚嘆させられました。最後の曲、「王宮のコンセール」は私の大好きな曲。様々な舞曲が次々と登場しますが、当時の雰囲気を想像しながら私も、微妙にアンブシャ(唇の繊細な形のこと)をコントロールして、音色感を変化させていきました。

そして昨日、みなとみらいでのチャリティコンサートで私たちのツアーも最終日を迎えました。主催は以前にもお声をかけていただいたことのある「難民を助ける会」の皆さんです。折も折、12月3日は国際障害者デー。また難民を助ける会の皆さんが取り組んでおられる、対人地雷禁止条約署名式10周年の日に当たるということでも意義深いことでした。会場には様々な展示もされ、音楽会に足を運んできてくださった方々に理解を深めていただくような工夫もされていました。そのような人々の愛に満ちた会場で最終日を迎えることができ、幸せに思っています。

1週間の日程を終えた私たちは、以前よりも更に大きな絆を感じることができました。
言葉も違う、生まれた場所も育った場所も違う者同士が、こうして音楽というもので共感し合えるというのは、なんて素敵なことなのだろう、と改めて感じています。それでは皆さま、素敵なクリスマスをお迎えくださいね!
2007年12月4日
山形由美
 
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