From Yumi
No.35 西オーストラリア旅行
「小さな架け橋になれれば…」というタイトルで
フロムユミに書かせていただいたのは去年の7月のこと。
西オーストラリアの首相から、「西オーストラリアワイン親善大使」の
任命を受けたときの気持ちを綴ったことを覚えておいででしょうか。
あれから年が変わり、とうとうオーストラリアに行ってまいりました!
広いオーストラリアの西側、インド洋に面した海岸を持つ西オーストラリア州は、
パースを首都とした美しい土地。その地に点在する数多くのワイナリーが
優れたプレミアムワインを生み出すことは以前から知っていましたが、
今回西オーストラリア政府のお招きにより視察旅行をさせていただき、
その魅力を満喫してきました。
雪の那須から真夏のパースに下り立つと、なんという日差しの明るさでしょうか。
澄んだ空気に一層その光が明るさを増しているようです。
珍しい黒鳥が飛来することから、スワンがシンボルとなっているパースは、
その名もスワンリヴァーという美しい川が流れ、その沿岸にはしゃれた家々が並んでいます。
クルージングで川を上っていくと、次第に葡萄の木が目に付くように。
ここがパース郊外のワイン生産地、スワンヴァレーなのです。
古く英国のヴィクトリア女王から下賜されたという土地には
有名なワイナリーがあり、多くの人々が訪れています。
その日はサンダルフォードというワイナリーで大きな催しがあり、
ワイナリーの広大な敷地には何千もの人々が集まっていましたが、その一隅に
VIPの方たちのために大きなパーティ用のテントが張られ、素晴らしいディナーが催されました。
そのオープニングに私がワイン・アンバッサダー(ワイン大使)としてご紹介を受け、
演奏をおこなったのですが、ブラックタイとイブニングドレスに身を包んだ400人のゲストたちは、
遠く日本から親善にやってきた私を温かく迎え入れ、音楽を楽しんでくださった様子でした。
ピアノの山内知子さんも私も、その雰囲気に一層気持ちが高まり、演奏に熱が入って
実に楽しく演奏することができました。
そのほかパース滞在中は、かつてイギリス人が入植した港、フリーマントルで
活気に満ちた雰囲気を楽しんだり、家族で経営している小さなワイナリーでテイスティングや会話を楽しんだり。
在パース総領事公邸にお招きを受け、総領事ほか西オーストラリア州副首相とお目にかからせていただくこともできました。
マーガレットリヴァーと呼ばれるプレミアムワインの名産地として知られる地は、パースから南西に位置します。
歴史はまだ浅いものの、国際的な賞を取るワイナリーが現れたり
新しいワイナリーも次々作られ、いずれも優れたワイン作りをしていることから、
最近とみに注目を浴びているということをご存知の方もいらっしゃるでしょう。
オーストラリア全土のわずか4〜5%の生産量でありながら、
プレミアムワインと呼ばれる高級ワインの生産量は全体の25%ということからもその特性がわかります。
そして行ったことのある人は口々に「ワインも雰囲気も素晴らしいところですよ」とおっしゃるので、
私も期待にふくらんでいました。車だと3時間くらいの距離だそうですが、チャーターした小型機ですとパースから1時間。
緑の大地と青い水面を見下ろしながら飛ぶと、自然いっぱいのマーガレットリヴァーに到着です。
海岸はサーフィンのメッカとして大会も開かれるということですが、
広い大地にはカンガルーが飛び交っていて、思わず歓声を上げてしまいました。
車で走ると、右にも左にも次々とワイナリーの門が続いています。
大きな資本のものもあれば、小さなファミリー経営のものも多いそうで、
それぞれが日々切磋琢磨してよりおいしいワインを造っている様子がしのばれます。
今回は全部合わせて10件以上のワイナリーを訪ねましたが、いずれもセラードアという
一般の方たちがテイスティングを楽しめ、また気に入ったワインを買うことができる設備を整えていました。
白、赤、ロゼやデザートワインに至るまで、造り手のお話を聞きながら年代や葡萄の種類の違いを楽しみ、
ワインに親しめるようになっているのは素晴らしいと思いました。
同じ葡萄畑でもちょっとした場所の違い、日光の当たり方などが味に影響することを知ると、
違う年、違う畑、もちろん違う品種ならばどれほどの違いになってくるのだろうかというのは想像に硬くありません。
また、それぞれの作り方の違いや樽の種類など、興味はどんどん広がってきました。
その地でできたワインを、ワイナリーにあるレストランでお料理と共にいただくのはまた格別でした。
それぞれに雰囲気のある建物で、肩肘張らずに本格的なお料理が楽しめるのです。
その時には細かい講釈など忘れて、明るい日の光とおいしい空気の中、
お料理とワインのお互いを引き立てあうコンビネーションを楽しみます。
海老や魚など捕れたてのシーフードに、爽やかな香りのワインのおいしかったこと!
西オーストラリアの魅力は、そのゆったりとした時間の流れだといいます。
日本では無理だとしても、一日一回は時の流れに身をゆだねてみる、そんなことを忘れないでいたいと思いました。
マーガレットリヴァーを代表するワイナリー、ルーウィンエステイトでは
オーナー自らが企画、準備してくださり、いくつものワイナリーが集まっての試飲会を催してくださいました。
どなたもご自分の作ったワインをそれは大切にすすめてくださり、そのよさをお伝えくださいました。
今までこれほどたくさんの種類のワインをテイスティングしたことはありませんでしたが、
徐々に繊細な味わいを感じるようになってきました。
「人生で大切なのはおいしい食事とワイン、それにいい音楽があれば言うことはない」という言葉は、
何人ものワインメーカーから聞きました。
ワインも音楽も、何の知識がなくても楽しむことはできますが、
もしほんの少しでも知識があれば、また知ろうとする気持ちがあれば、その楽しみはもっと大きいものになるでしょう。
そんなことを感じながら、様々なワインを味わいました。
そのワイナリーでも演奏をおこない、和気藹々とした夜は更けていきました。
今まで、ヨーロッパやアメリカは何度となく訪れましてきましたので、
もしかしたら少しは世の中のことを知っているような気持ちになっていた部分があったかもしれません。
しかし今回初めての南半球を訪れて、「百聞は一見にしかず」という言葉を再確認しました。
カンタス航空の直行便で成田からパースまでは10時間のフライトですが、往復とも夜発って現地に着くと朝。
時差はわずか一時間ですので、体への負担もなく、充実したスケジュールが組めることに驚きました。
今回は一週間にわたるスケジュールでしたが、元気いっぱいに過ごしました。
日本が寒波に襲われている時に、あちらでは素晴らしく過ごし易い夏の気候が広がっていて、寒がりの私にはありがたいことでした。
帰国してからもなお、西オーストラリアの余韻に浸っています。
お土産に持ち帰ったワインのグラスを傾けていると、あちらでお会いしたたくさんの方たちの笑顔が浮かんできます。
移民の国だからでしょうか、どなたも分け隔てのないオープンな雰囲気で、親しみ易い方ばかりでした。
これからも機会があれば、友人や家族と是非また訪ねてみたいと思っています。
そして、音楽・ワインを通じて日豪親善のお役に立てるよう、微力ながら取り組んでいきたいと思っています。
フロムユミに書かせていただいたのは去年の7月のこと。
西オーストラリアの首相から、「西オーストラリアワイン親善大使」の
任命を受けたときの気持ちを綴ったことを覚えておいででしょうか。
あれから年が変わり、とうとうオーストラリアに行ってまいりました!
広いオーストラリアの西側、インド洋に面した海岸を持つ西オーストラリア州は、
パースを首都とした美しい土地。その地に点在する数多くのワイナリーが
優れたプレミアムワインを生み出すことは以前から知っていましたが、
今回西オーストラリア政府のお招きにより視察旅行をさせていただき、
その魅力を満喫してきました。
雪の那須から真夏のパースに下り立つと、なんという日差しの明るさでしょうか。
澄んだ空気に一層その光が明るさを増しているようです。
珍しい黒鳥が飛来することから、スワンがシンボルとなっているパースは、
その名もスワンリヴァーという美しい川が流れ、その沿岸にはしゃれた家々が並んでいます。
クルージングで川を上っていくと、次第に葡萄の木が目に付くように。
ここがパース郊外のワイン生産地、スワンヴァレーなのです。
古く英国のヴィクトリア女王から下賜されたという土地には
有名なワイナリーがあり、多くの人々が訪れています。
その日はサンダルフォードというワイナリーで大きな催しがあり、
ワイナリーの広大な敷地には何千もの人々が集まっていましたが、その一隅に
VIPの方たちのために大きなパーティ用のテントが張られ、素晴らしいディナーが催されました。
そのオープニングに私がワイン・アンバッサダー(ワイン大使)としてご紹介を受け、
演奏をおこなったのですが、ブラックタイとイブニングドレスに身を包んだ400人のゲストたちは、
遠く日本から親善にやってきた私を温かく迎え入れ、音楽を楽しんでくださった様子でした。
ピアノの山内知子さんも私も、その雰囲気に一層気持ちが高まり、演奏に熱が入って
実に楽しく演奏することができました。
そのほかパース滞在中は、かつてイギリス人が入植した港、フリーマントルで
活気に満ちた雰囲気を楽しんだり、家族で経営している小さなワイナリーでテイスティングや会話を楽しんだり。
在パース総領事公邸にお招きを受け、総領事ほか西オーストラリア州副首相とお目にかからせていただくこともできました。
マーガレットリヴァーと呼ばれるプレミアムワインの名産地として知られる地は、パースから南西に位置します。
歴史はまだ浅いものの、国際的な賞を取るワイナリーが現れたり
新しいワイナリーも次々作られ、いずれも優れたワイン作りをしていることから、
最近とみに注目を浴びているということをご存知の方もいらっしゃるでしょう。
オーストラリア全土のわずか4〜5%の生産量でありながら、
プレミアムワインと呼ばれる高級ワインの生産量は全体の25%ということからもその特性がわかります。
そして行ったことのある人は口々に「ワインも雰囲気も素晴らしいところですよ」とおっしゃるので、
私も期待にふくらんでいました。車だと3時間くらいの距離だそうですが、チャーターした小型機ですとパースから1時間。
緑の大地と青い水面を見下ろしながら飛ぶと、自然いっぱいのマーガレットリヴァーに到着です。
海岸はサーフィンのメッカとして大会も開かれるということですが、
広い大地にはカンガルーが飛び交っていて、思わず歓声を上げてしまいました。
車で走ると、右にも左にも次々とワイナリーの門が続いています。
大きな資本のものもあれば、小さなファミリー経営のものも多いそうで、
それぞれが日々切磋琢磨してよりおいしいワインを造っている様子がしのばれます。
今回は全部合わせて10件以上のワイナリーを訪ねましたが、いずれもセラードアという
一般の方たちがテイスティングを楽しめ、また気に入ったワインを買うことができる設備を整えていました。
白、赤、ロゼやデザートワインに至るまで、造り手のお話を聞きながら年代や葡萄の種類の違いを楽しみ、
ワインに親しめるようになっているのは素晴らしいと思いました。
同じ葡萄畑でもちょっとした場所の違い、日光の当たり方などが味に影響することを知ると、
違う年、違う畑、もちろん違う品種ならばどれほどの違いになってくるのだろうかというのは想像に硬くありません。
また、それぞれの作り方の違いや樽の種類など、興味はどんどん広がってきました。
その地でできたワインを、ワイナリーにあるレストランでお料理と共にいただくのはまた格別でした。
それぞれに雰囲気のある建物で、肩肘張らずに本格的なお料理が楽しめるのです。
その時には細かい講釈など忘れて、明るい日の光とおいしい空気の中、
お料理とワインのお互いを引き立てあうコンビネーションを楽しみます。
海老や魚など捕れたてのシーフードに、爽やかな香りのワインのおいしかったこと!
西オーストラリアの魅力は、そのゆったりとした時間の流れだといいます。
日本では無理だとしても、一日一回は時の流れに身をゆだねてみる、そんなことを忘れないでいたいと思いました。
マーガレットリヴァーを代表するワイナリー、ルーウィンエステイトでは
オーナー自らが企画、準備してくださり、いくつものワイナリーが集まっての試飲会を催してくださいました。
どなたもご自分の作ったワインをそれは大切にすすめてくださり、そのよさをお伝えくださいました。
今までこれほどたくさんの種類のワインをテイスティングしたことはありませんでしたが、
徐々に繊細な味わいを感じるようになってきました。
「人生で大切なのはおいしい食事とワイン、それにいい音楽があれば言うことはない」という言葉は、
何人ものワインメーカーから聞きました。
ワインも音楽も、何の知識がなくても楽しむことはできますが、
もしほんの少しでも知識があれば、また知ろうとする気持ちがあれば、その楽しみはもっと大きいものになるでしょう。
そんなことを感じながら、様々なワインを味わいました。
そのワイナリーでも演奏をおこない、和気藹々とした夜は更けていきました。
今まで、ヨーロッパやアメリカは何度となく訪れましてきましたので、
もしかしたら少しは世の中のことを知っているような気持ちになっていた部分があったかもしれません。
しかし今回初めての南半球を訪れて、「百聞は一見にしかず」という言葉を再確認しました。
カンタス航空の直行便で成田からパースまでは10時間のフライトですが、往復とも夜発って現地に着くと朝。
時差はわずか一時間ですので、体への負担もなく、充実したスケジュールが組めることに驚きました。
今回は一週間にわたるスケジュールでしたが、元気いっぱいに過ごしました。
日本が寒波に襲われている時に、あちらでは素晴らしく過ごし易い夏の気候が広がっていて、寒がりの私にはありがたいことでした。
帰国してからもなお、西オーストラリアの余韻に浸っています。
お土産に持ち帰ったワインのグラスを傾けていると、あちらでお会いしたたくさんの方たちの笑顔が浮かんできます。
移民の国だからでしょうか、どなたも分け隔てのないオープンな雰囲気で、親しみ易い方ばかりでした。
これからも機会があれば、友人や家族と是非また訪ねてみたいと思っています。
そして、音楽・ワインを通じて日豪親善のお役に立てるよう、微力ながら取り組んでいきたいと思っています。
2006年1月29日
山形由美
山形由美