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幸せ色に包まれて

週末を過ごすため、那須の家に来ている私は、徐々に明るくなってくる窓辺から聞こえてくる鳥のさえずりに、とても寝ていることができず、思いのほか早起きをしてしまいました。

今日は、私のバースデー。いくつになっても誕生日はうれしいものですが、何年かぶりに那須で迎えられたことは格別です。新緑とツツジの、爽やかで明るさに満ちた色彩に包まれると、初夏に生まれてよかったと心から思えるのです。

色というのは不思議なものです。なぜか自分にはとくに好きな色があること、そしてひとつの色が、別の色と組み合わされるとお互いを引き立てあって、さらに魅力を増すことがあるというのを知ったのは幼稚園のときでした。
先生から、好きな色紙を2枚いただけることになり、ひとりずつ前に出て選んだのですが、私はたくさんある中から、時間をかけて、淡いピンクとブルーを選びました。その2枚を自分の席に持ち帰り、机の上に並べたとき、その優しいピンクと同じような薄さのブルーの組み合わせの素敵さに、うっとりとしてしまいました。
「なんてきれいなんだろう」
私は折り紙をすることも忘れて、見入るばかりでした。そのときの気持ちは今もはっきりと残っています。それが、私の色彩に対する目覚めだったのだと思います。


中学生の頃、自分の部屋をピンクにしたくてたまらなくなりました。
インテリア雑誌で見た外国の家の写真などに影響されたのかもしれません。ピンクといっても、夢見るような淡いピンクでなければなりません。できればカーテンとベッドカバーをお揃いにしたかったのですが、当時はそのような既製品は見つかりませんでした。

そこで布を買って自分で作ろうと思い立ちました。何軒かの生地屋さんを訪ねましたが思うような色は見つかりません。かといって妥協をするのは絶対に嫌でした。そこで思いついたのが、自分で染めるということだったのです。
染めた経験はありませんでしたが、生成りの天竺木綿と、ダイロンという粉末の染料剤を買ってきました、しかし、もし思うような色にならなかったら大変です。ちょっとでもイメージと違う色調のピンクになったら失敗なのですから。

そこでまず、小さい布片をいくつも作り、何種類かの濃さに希釈したダイロンの液体に漬けてみました。乾かしてどのようなトーンになるのか、実験を繰り返し、いざ本番に臨んだのです。
しかしカーテンとベッドカバーを作るだけの布地を染めるのは大変です。何しろ量が多いので、洗面器やバケツ程度では全く足りません。

いったいどうしようかと考えた末思いついたのが、バスタブでした。タイル張りのバスタブにピンクの染め液を満たし、布を漬けこんだのです。(親もよく許してくれたと思います)。
お風呂をかき混ぜる用具で布を突いたり、しまいには足で踏んだり…。そうしてどうにか染めた布を日に干すと、本当に自分が望んでいた淡いピンクになったのです。そのうれしかったこと。

カーテンとベッドカバーに縫い上げました。部屋にあしらうと、天竺木綿の素朴さがこざっぱりとした清潔感を醸し出し、どこにもない自分だけのインテリアが出来上がりました。以来多感な年代をその部屋で過ごし、好きな色に包まれて生活するということが、幸せな気持ちを育んでくれるのかを実感しました。

今、私は演奏家として毎日を過ごしています。演奏会を前に、曲目はもちろんのこと、どんな会場だろうか、どういうお客様が来てくださるのだろう、季節は?等々の要素をイメージします。そしてそのとき着用するドレスを選びます。なぜなら、全身を包むドレスの色がどれほど重要かを知っているからなのです。ドレスの色が、自分の心に、音楽そのものに影響を与え、お客様に伝わっていくのかをいつも実感しています。

色というのは不思議なものです。いつも幸せ色に包まれていたい、そんなことを思うバースデーの朝でした。


2015年5月17日 那須高原の朝に
山形由美


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