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No.63 花の二都物語 〜神戸そして京都〜

4月4日、神戸の街は満開の桜に彩られていました。
久しぶりの神戸でのリサイタルを控えた私は、一層ワクワクしてしまいます。
とくに今回は、最近始めた試み、平日のアフタヌーンコンサートとあって、期待に胸が膨らむのでした。日頃、夜の外出がままならない主婦の方や、日中の自由もきくリタイアなさったご年配の方たちなどに、ゆったりと音楽を楽しんでいただきたいという気持ちで始めたアフタヌーンコンサートですが、うれしいことに前回の名古屋に続き、今回も早々と満席をいただきました。

音楽だけではなく前後の時間にお花見を楽しんだり、ティータイムやお食事も楽しんでいただけるようにと、1時半開演という時間設定にし、フルートのもつ様々な魅力を盛り込めるよう、工夫を凝らしたプログラムを組んでみました。前半はその日お披露目を迎えた真っ白なチェンバロ、そして後半はピアノとの組み合わせに変え、時代によって変遷してきた音楽や、楽器のお話などを取り混ぜながら演奏を進めていると、あっという間に時が進んでいったような気がしました。ところが終わってみると、アンコールを含めて2時間半近くが経っていてびっくり。しかし長時間にも関わらず、最後まで皆さんに楽しい様子でお聴きいただき、とてもうれしく思いました。

普段、なかなか生の演奏やクラシックに触れることの少ない方たちにも、音楽を直にお届けできたことに満ち足りた気持ちを覚えながら、会場・神戸文化ホールをあとにすると、まだまだ高い日に美しい桜の花が映えていて、神戸での幸せな1日を印象付けてくれました。

新幹線で二駅。京都に下り立つと、そこはまさに古都。同じ関西でありながら、異国情緒豊かな神戸から来ると、そのコントラストがより強く感じられます。続く5日、6日は嵯峨野の名刹、大覚寺での野外コンサートです。
大覚寺を訪れるのは、10数年ぶりでしょうか。前回は名月を観ながら俳句を詠む、というNHKの番組で訪れたその地は、まさに春爛漫を迎えていました。
本堂を背景にした石舞台に特別に設置されたステージには、チェンバロが置かれています。チェンバロは本来、大変繊細な楽器です。しかしその日のために用意していただいたものは、日光や気温、湿度の変化にかなり耐えられるという、特別なもの。色もお寺になじむ、深い緑色をしています。
僧侶たちによる声明に続き、私が演奏を開始したのは5時半過ぎでした。宮廷音楽家であったクープランの流麗な曲から始まり演奏が進むにつれ、徐々に日が暮れていきます。そしてライトアップされた桜が幻想的に浮かび上がった頃、「さくらさくら」を演奏しました。チェンバロの弱音である「リュート音」をお琴の音色に見立てて、日本の雅を表現したのでした。
特別にご招待を受けた方たちのために催されたコンサートでしたが、その2日間が最高の気候や様々な条件に恵まれ、とどこおりなく終了したことは、殆ど奇跡のように思えました。

「一期一会という言葉は本当だな」と、つくづく感じます。
その日、そのときにしか経験することのできないことの貴重さ、そしてそれを共有してくださる方がたとの出会いこそが、私の財産だと深く感じた、春の二都でした。
2008年4月8日
山形由美
 
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